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きっかけは気まぐれで
四限目が終わった。
ハレルヤは今日も三限からサボっている。
多分また屋上だろうと、いつもより少し重い弁当を持って階段を上がった。



  きっかけは気まぐれ



「ティエリアって、いつも弁当自分で作るのか?」
「そうだけど。」
「じゃあ明日俺の分も作ってくれよ。」
「…なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだ。」
「お前の弁当食ってみたいから。」

そう言われたのが昨日のこと。
最初は作ってやるつもりなど毛頭なかったのだが、自然と今朝は早く起きてしまい、今月はまだ生活費に余裕もあるから作ってやることにした。

「ティエリアー腹減ったー」

屋上に着くやいなや、不機嫌な声がかけられる。
ハレルヤのところへ行って座り、俺は弁当箱のフタを開けた。
中には栄養バランスのとれた色彩豊かなおかずたちが並ぶ。
我ながら完璧だ。

「おっ、すげぇ」
「…いただきます」

そういえば、母親以外のために料理するのはこれが初めてだと、このときになって思い出した。
弁当箱の角にある玉子焼きを口へと持っていく。
味見をする時間まではなくて心配だったが、急いで最後に作った玉子焼きがこの味で仕上がっているなら、他のも大丈夫なはずだ。

視線を感じて弁当箱から目線を上げる。
ハレルヤは箸を持ちもせず、弁当を食べるそぶりさえ見せず、玉子焼きを食べる俺を見ていた。

「…もしかして、嫌いなものでも入っていたか?」

ハレルヤの食べ物の好みがわからなかったから、一応万人受けのよいおかずばかりにしておいたのだが。

「いや、俺の好きなもんばっか。」
「じゃあなんで…」
「普通手作り弁当って、食わせてもらうものだろ?」
「…………は?」
「だ、か、ら、あー…」

ハレルヤは、あーと開いた口を指し示す。
俺に食べさせろと言うのか。
『手作り弁当=食べさせてもらう』というコイツの方程式は、俺からしてみればありえなかった。





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あきゅろす。
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